ロシア産のスピッツ・サモエドは、そのふわふわの真っ白な毛並みといつも笑っているようなスマイルが愛らしい大型犬ですが、どうした事か、インターネット上では「頭が悪い」と言われることもあるようなのです。
これではサモエドを飼いたいと思っている方も躊躇してしまいますよね!
そんな訳で、今回はサモエドが本当に頭が悪い犬種なのか、はたまたそれはただの風評被害に過ぎないのか、その辺りを中心に、サモエドの性格や、日本で飼う際の問題点などを紹介していきたいと思います。
サモエドは頭悪い?その真実とは
実際問題、サモエドは頭が悪い犬種なのでしょうか?
これに関しては興味深い研究がされているようで、アメリカのスタンレー・コレン氏が研究・発表した『犬の賢さランキング』では、研究された141犬種中44位と、上位に食い込んでいる事が解ります。
参考までに日本の柴犬は94位、秋田犬は105位と真ん中くらいの順位ですので、これらの犬種よりも上位に来るのがサモエドという犬種なのです!
少なくとも頭が悪い訳ではないようですね。よかったです!
サモエドの性格はうるさい?人懐っこい?
では、何故頭が悪いと言われるのか。性格から分析してみましょう。
サモエドは大型の中では社交的で人懐こい部類で、温厚で活発、辛抱強い性格をしていると言われています。
反面、家の番犬としてはその社交性が原因で不向きな犬種であるとされているようです。
この事から推測するに、向いていない番犬として利用しようとして、外部の人間に吠えたりせず出迎えてしまう為、「この犬は頭が悪いんじゃないか」と言われているのかもしれません。
また、賢く、躾はしやすいようですが、自分が納得しない事には頑固になる一面もあるようです。
このことから、気に入らない命令をされてそれを無視したり、抗議として吠えたりしたのを見た飼い主が「この子は私の言う事を聞かないバカ犬なんだ」「命令が理解できていない吠えてばかりの頭の悪い子なんだ」と認識してしまい、そのような風評になっている可能性もあります。
その他、のんびりとした性格で穏やかな笑顔を見せる事から、罵倒ではなく「愛すべき駄犬」のような一種の愛らしさを表現する言葉として評価されていたものを、穿って受け止められたりしてそのような勘違いが広まったのかもしれません。
いずれにしても、「サモエドは頭が悪い犬種」というのは風評被害のようですね。
サモエドの欠点
以上の特徴から、サモエド自身の欠点と言うよりは、飼い主側の知識不足・誤認などが原因で頭が悪いと言われているようにも思えます。
サモエド自身の欠点としては、やはり良点とも言える部分がそのまま欠点にも反転しうる、というのもあると言えるでしょう。
社交性の高さ・人懐っこさが強い事はやはり家を守る番犬としては不向きという事にもつながります。
運動好きで活発な性格の為、十分な運動の時間やスペースを確保しにくい人から見ると欠点となりうるかもしれません。
また、飼い主やその家族との時間を大切にする傾向が強い為、一緒にいる時間を確保しにくい人にとっては煩わしく感じられるかもしれません。
このような問題を避ける為には、事前にその犬種の性格・性質を把握することが何より大事と言えます。
これらを最初から意識することで、飼育環境のミスマッチや誤認からくる不幸は減らせる事でしょう。
サモエドが人気な理由
日本ではその適した飼育環境を用意するのが難しいからか、飼育頭数そのものはそんなに多くはありませんが、海外においては人気の犬種の一つになっています。
その人気の理由は、美しい真っ白でモフモフな姿と、とても善良そうな『サモエドスマイル』と呼ばれる、笑顔に見える顔立ちから。
そしてそのスマイルからくる印象を裏切ることなく温厚でフレンドリーな為、子供の相手を任せられる、安心できる性質もまた、人気の理由のようです。
サモエドの噛む力はどのくらい?
犬の噛む力を示す言葉として、PSIという単位があります。
PSIとは1平方インチ辺りの1重量ポンドの数値で、例えば人間の成人男性ならばPSIは161ほど、小型犬のチワワは140ほどとなっています。
サモエドの数値は200~400ほど。
PSIは頭の大きさなど様々な要因で変動する為、犬種ごとと言うよりは個体ごとの数値からデータを取るしかないようで、結構ブレがあるようですが、最大で人間の2.5倍ほどと考えると、かなり強力な事が解ります。
サモエドは寒さに強い?
サモエドはロシアのシベリア産の犬種で、極寒の中トナカイの番やカモシカ狩り、ソリ引きをすることを使命として生きてきた為、寒さには非常に強くなっております。
反面暑さにはとても弱く、日本の夏の暑さの下では熱中症になってしまう可能性もある為、ケアが必要となるようです。
サモエドとポメラニアンの関係
インターネット上では、「サモエドはポメラニアンのご先祖様」という説が流れているのですが、「これはどういう事なのか」と実際に調べてみました。
小型犬の中でも人気犬種とされるポメラニアンは、サモエドと同じく「スピッツ」と呼ばれる特徴を持つ犬種でもあります。
スピッツとは、「尖った」という意味のドイツ語で、その呼び名の通り尖った鼻先を持つ多くの犬種がスピッツと呼ばれるようになったのだとか。
ポメラニアンはドイツで生育されていた「ジャーマンスピッツ」の一種なのですが、ウィキペディアではポメラニアンを産み出す際に、『極地で生育されていた大型の使役犬』が利用されたという記述がある為、どうもここから「極地で生育されていたスピッツ=サモエド」という説が流れていたようですね。
ただ、日本における畜犬団体である「ジャパンケネルクラブ」では、
『ジャーマン・スピッツは石器時代の「Peat Dog(Torfund)」、「Canis familiaris palustris Rüthimeyer」及び後の「Lake Dwelling Spitz(Pfahlbauspitz)」の子孫である。中欧に於ける最も古い犬種である。多くの他犬種がこの犬種から発展していった。』
との記述があり、これを根拠とするならば、ポメラニアンはサモエドとは無関係に中欧で石器時代から変化していった犬を起源に持つ犬種である、と言えるかもしれません。
いずれにしても、この辺りどれが真実かは解りにくくなっていますので、噂に流されないように精査したいところですね。
サモエドは頭悪い?日本で飼う前に知っておくべきこと
サモエドがどんな犬種なのかは紹介できましたが、ここでは、飼う上で知っておくべき事や必要な事などを紹介したいと思います。
これからサモエドを飼う方には必見ですよ!!
サモエドを日本で飼うときの注意点は?
サモエドを飼う際に必要な注意点には、以下のものがあります。
1.飼う為のスペース
サモエドは大型犬ですので、飼う際にはある程度のスペースが必要となってきます。
中型犬・小型犬と比べ広めのスペースを確保することが最低条件と言えるでしょう。
2.持ち前の体力からくる運動欲求
サモエドは、ソリや狩猟などに用いられていた犬種ですので、かなりの運動欲求を持っています。
この為、その欲求を満たせるだけの運動を定期的にさせてあげることが、サモエドを飼う上でとても重要なポイントとなっています。
広い庭などを用意できなくても、近年ではドッグランやペット同伴可の公園など、遊べる場所がありますので、近隣にそういった場所があるようなら活用するのも良いでしょう。
散歩も勿論重要な運動要素。一日に二回、一時間以上使ってしっかり運動させてあげましょう。
3.人と共に在る事を強く望む性質
サモエドは、とても人懐こく社交的な反面、孤独にとても弱く、長時間主人が家を離れていたり、家に誰もいない状態にされると、寂しがってしまいます。
出来る限りサモエドを独りぼっちにしないように気を使い、もし長期間家を空けるようなら、ペットホテルなどを活用して孤独な状態を作らないようにするなどの工夫が必要です。
また、飼い主や家族とのコミュニケーションをとても大切にする為、一緒に遊んであげたりかまってあげることは、他の犬種以上に大事な時間となります。
ですので、沢山かまってあげてください。
4.食欲旺盛で一気食いをしやすい性質
大柄故か、サモエドは食欲も旺盛で、出された食事を一気にガツガツと食べてしまう「一気食い」を行う事が多い犬種であるとされています。
一気食いをすると、急激に食べ過ぎた事による吐き戻しや腹痛などを引き起こすことにも繋がる為、これを防止する食器類を導入するなど、ある程度の工夫が必要となります。
5.サモエドは抜け毛がとても多い
サモエドはとても抜け毛の多い犬種です。
ダブルコートの毛は換毛期にはたっぷりの抜け毛を産みますので、毎日のブラッシングで対応する必要があります。
ブラッシングには、皮膚病防止や暑さ対策といった効果もある為、とても重要です。
6.サモエドは暑さにとても弱い犬種
シベリア原産のサモエドは、日本の高温多湿な気候にはあまり適した犬種ではない為、夏場の暑さをそのまま受けると弱ってしまいます。
これを避けるためにも、夏場は冷房の効いた涼しい屋内で飼うようにしましょう。
直射日光を避け、水分補給も怠らず、常に体調を管理してあげることが大切です。
サモエドは飼いやすい?
とても温厚でフレンドリー、よく懐く事から、飼い犬としてはかなり飼いやすい性格です。
しかし、上記の注意点からも解るように、日本の環境下ではあまり飼いやすいとは言えない問題点も多いと言えるでしょう。
広めのスペースを確保することは日本の住宅事情では厳しい場合も多く、運動の為の施設、あるいは長時間かつ複数回の散歩などを要する運動の必要性、そもそもの夏の暑さに弱い点など、日本で飼うには不向きな点が目立ちます。
沢山かまってあげる必要もありますし、家に常に誰かいる状況というのも、核家族化が進み単身生活者が増えている昨今の事情からすると厳しいのではないでしょうか。
このような点から、サモエドを飼う際には、ある程度の住宅スペースが必要であると同時に、時間的・人的な余裕が求められ、人を選ぶ犬種であると言えそうです。
サモエドの寿命はどのくらい?
サモエドは10~13年くらいが寿命とされています。
大型犬としては一般的な長さのようです。
サモエドは臭い?
サモエド自身は体臭の少ない犬種であるとされていますが、特徴とも言えるダブルコートの体毛は、散歩の際にゴミや虫、菌類や汚れなどが付きやすく、これが臭いの原因となることが多いようです。
毎日のブラッシングの他、月に一度程度の頻度でシャンプーをしてあげることで、こういった臭いの元を断つことができます。
サモエドを夏に散歩させるときの注意点
夏に弱いサモエドは、無理に陽の高い時間帯に散歩に連れ出すと弱ってしまいます。
この為、散歩の時間は陽が昇る前か沈んだ後にしてあげましょう。
サモエドに限りませんが、熱いアスファルトの上を走らせるのは足の火傷にも繋がりますので厳禁です!
サモエドはカットが必要?
サモエドは柴犬などと同じグルーミング(ブラッシングがメイン)犬種ですので、定期的なトリミングやサマーカットなどは必要としません。
毛が絡まってしまった時を除けば、短くすることで却って皮膚がダメージを受け、病気の元になってしまう事もあるので、必要外のカットは避けるようにしましょう。
グルーミング犬種は、トリミングよりも毎日のブラッシングによるお手入れの方が重要ですので、ブラッシングを欠かさずしてあげることが重要です。
サモエドの値段はいくら?
サモエドを得る為には、ペットショップやブリーダーとの直接交渉、保護犬譲渡会、知人からの譲渡など様々な方法があります。
ペットショップでの販売価格は2024年時点では48万円前後~、ブリーダーとの交渉の場合は57万円前後~のようです。
ペットショップとブリーダーの場合は仔犬からの販売となり、譲渡会の場合は保護犬の為、成犬の場合もあるようですが、サモエドは希少種のようで、そもそも譲渡会に出てくることはあまりないようですね。
ただし、こちらの場合は掛かる費用は譲渡費用のみで済む為、かなり安く済むのが特徴です。
まとめ:サモエドは頭が悪い?性格や飼う際の注意点につて
最後に、ここまで紹介した内容を簡単にまとめます。
- 「サモエドは頭が悪い」は風評被害。実際には賢い犬種である。
- サモエドはとても温厚で人懐っこく、フレンドリーな性格の為、子供の相手などにも良く、これが理由で海外では人気がある。ただし、誰にでもフレンドリーすぎるため番犬としての適正は全くない。
- サモエドは寒さにはとても強いが、暑さにはとても弱く、日本の夏は熱中症になりやすい為注意が必要である。夏場の散歩は陽が昇る前か落ちた後にするべし。
- サモエドは住宅的・時間的・人的余裕がないと飼うのが難しい犬種である。広い涼しいスペースに住まわせ、沢山運動をさせてあげて、沢山かまってあげることが重要である。
- サモエドはダブルコートの体毛を持ち、換毛期には大量の抜け毛が発生する。このケアとして、毎日のブラッシングと月に一度のシャンプーを行う事で、皮膚や体毛を衛生的に保ち、皮膚病や臭いの元となる菌類・汚れ・虫などを排除することができる。
- 反面、サモエドはカットを必要としない。絡まった毛の排除など必要な場面を除いて、トリミングはしないようにした方が健康を保てる。
どうかサモエドを飼う予定の方が、この温厚でフレンドリーな友人と楽しい日々を送れますように。
※記事内の画像はイメージです。
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